俺は香我美良一高校生になったばかりだ。
家は貧乏だし、中学の頃なんてそりゃあちこちで暴れまくって酷いもんだった。まぁなんでそんな風に暴れたのか、理由はないこともない。
俺は子供の頃から見た目がどうしても可愛いと言われるような少年だった。
その可愛いと言われることがある日から馬鹿にされてるんじゃないだろうかと無性に腹が立ち、それでいじられることが増えていた。
最初は大人しかった俺だけど、段々その見た目が嫌になって、ある日教室でキレて暴れたら、意外とみんなが大人しくなり、もう誰も俺を可愛いとは言わなくなった。
今は髪型もワックスでキメて額を丸出し、横に流すようなヘアセットをして、まぁこの年にありがちなちょっと悪さをひけらかすような感じだ。
そんな俺だけど、何故か成績は比較的よかったので、私立高校には推薦で行けることが決まり、少しだけ親にはホッとされたようだ。私立と言っても最近は同じ県であれば授業料が無償化されていた。公立と違い、もしかして他の部分で金銭的に迷惑がかかるんじゃないかと思ってはいたが、それでも親は思い切って学校に行かせることにしたらしい。
中学は学ランだったので、この髪型もイケてたんだけど、高校に上がる頃にはブレザーのなんかお坊ちゃん的な学校だったので、この髪型が妙に浮いていた。でも俺は舐められるのが嫌だったので、このままの髪型で行くことにした。
新しい学校風鈴高校は公立の中学と少し様子が違い、俺は入学式にしまったと思った。
明らかに品がいい……。きっと俺は場違いなところに来てしまったに違いない。
そしてやっぱりこの髪型がなんとなく浮き、周囲から悪目立ちしていた。
中学の頃は俺みたいな髪型の奴が多かったのに、今、俺の周りには誰一人としてその髪型をした奴がいない。
入学式の後、俺はなんとなくそれが気になり、トイレに駆け込んだ。
入り口で誰かとぶつかる。その拍子に本が落ちてしまった。
「わりぃ……」
慌てていう俺の目の前には眼鏡をかけた青年が立っていて、そいつは俺よりも背が高かった。
彼は無言で本を拾い、俺の事をじっと睨んだ。
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